割れた窓理論 / ブロークン・ウィンドウ・セオリー

 

アメリカの犯罪学者、ジェームズ・ウィルソン氏とジョージ・ケリング氏が考え出した理論です。アメリカの学者はすぐに何でも理論にしてしまいます)

 

廃校となり使われていない校舎や人の住んでいない建物の窓が1枚割れているのを放置すると、「誰も気にしていない」、「責任を取っていない」と、間もなく他の窓も割られ始め、「ここでは窓が割られることが許される」 という信号が出てしまい、最後にはほとんどの窓が割られてしまいます。

 

ニューヨークでは1980年代の後半、夕暮れ時になるとだれも外を歩かず、街路がゴーストタウンになるほど犯罪が起きていました。

 

殺人事件が年に2千、重罪事件が60万件以上。

 

アメリカ一の犯罪都市でした。

 

それはまるで映画やアニメに出てくるようなバイオレンスの世界でした。

 

(私もその頃丁度ニューヨークに行く機会がありましたが、自分のわずか数メートル前で起こった、黒人男性による黒人女性のハンドバックの引ったくりには本当に驚きました)

 

地下鉄は特にひどく、「危ないから地下鉄には絶対に乗るな」 と言われるほどでした。

 

夜間の地下鉄には各車両に警官が1人づつ乗り、特に2両目以降に乗るのは自殺行為のようだったそうです。

 

電車の車両は落書きだらけで汚れていましたが、市の交通局はそれを5年かけて一掃しました。

 

その数約6千車両。

 

路線ごと、車両ごとに計画を立てて清掃、折り返し地点には清掃基地を設けて、落書きのある車両を見つけるとすぐに消すか、その車両を外す徹底ぶりです。

 

すると不思議なことに、犯罪率もガタッと下がりました。

 

重犯罪事件に関しては7割以上も減りました。

 

その後、当時の地下鉄警察の指揮官ブラットン氏は、地下鉄内で頻繁に起こる重罪事件に対して、一見的が外れたような無賃乗車の撲滅に取り組みました。

 

逮捕者の数は今までの約5倍。

 

でもそれでどういう訳か、それで重罪事件が激減しました。

 

その後、市長に就任したジュリアーノ氏は、ブラットン氏をニューヨーク市警の長官に任命し、落書き消し、歩行者の信号無視、信号待ちの車の窓拭き、公共の場所での泥酔や空き缶などのゴミの投げ捨てなど、軽犯罪の取り締まりを徹底的に続けた結果、犯罪発生件数が急激に減少して犯罪都市の汚名を払拭することに成功したのです。

 

ニューヨーク市は全米でも最も安全な大都市となったとされ、ニューヨーク市を浄化した市長としての名声を得ました。ギネスブックにおいても「最も多く犯罪率を削減させた市長」としてノミネートされています。

 

 

荒れている学校や会社で掃除を普及させると、これも不思議なことに荒れ、廃れが治まってしまい、良い学校、良い会社になってしまいます。

 

それが日本で今、掃除に加わる人の数が10万人以上に増えた理由です。

 

日本では、警察もその活動を認めて協力しています。

 

暴走族や非行少年・少女が更生してしまうからです。

 

 

それはシステム思考では、その構造を分解して理解し、改善・改良するのに最も有効なポイントであるレバレッジ・ポイントを突いたら大きく変わるという、小さな力で大きな効果を得る考え方とも似ているそうです。

 

そしてそれは周りの環境を変えるということでもあります。

 

ニューヨークの犯罪率の激変の背景には、大量の犯罪者の他の町への移動などがあったのでしょうか?

 

それとも市民全員が急に善悪の区別を付けられるようになったのでしょうか?

 

数万、数十万の犯罪に走りやすい人々が突然犯罪を起こさなくなったのですから、何かあるはずです。

 

実はそこには背景・環境の問題があります。犯罪を起こしやすい人は、ある一定の確率でどこにでもいます。

 

でもそれだけでは犯罪は起こりません。

 

そこに、「犯罪を起こしても大丈夫そうだ」 という背景・環境が揃うと犯罪が起きてしまいます。

 

どんな状況や環境の中でも、天使のような人もいれば極悪人も勿論います。

 

いえ、実際には、どんな天使も極悪人もその環境に左右されます。

 

天使のような人から、「えっ?」 と思える言葉や行動が出たり、その逆もしかりです。

でも多くの人は、状況や状況に左右される幅が大きく、その状況・環境が大きな影響力を持ちます。

 

だからこそ日本では311を代表するような、太古の昔から続く天災に対しての日本人の取る態度が世界で賞賛されます。

 

会社でも同じで、ミスが多い、クレームが多い、社員に活気がないなど、効率が悪く居心地が悪い職場も、ブロークンウィンドウ理論と同じで、細かな部分を見過ごしたり疎かにした、環境作りの失敗の結果です。

 

例えば、挨拶が無い、電球の球切れがそのまま、トイレが汚い、仕事机の上は書類だらけ、社員間の言葉遣いが悪いなどです。

 

このような細かな点をひとつづつ改善していけば、ささいなミスやトラブルも防止でき、社内の環境も改善されます。

 

そこで掃除が見直されているのです。

 

家庭でも同じで、挨拶をしない、置いた靴が乱れている、脱いだ服をすぐにたたまない、開けた後にすぐに閉めないなど、些細なことのように思えても「キチッと」 したことを徹底することがとても大切です。

 

 

出典:

鍵山秀三郎著書

「日本を美しくする会」ウェブサイト

 

イーズ未来供創フォーラム 他多数